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税務訴訟


1 総論

 不服申立を行っても原処分の違法性が認められなかった場合には訴訟を提起
する必要があります。
 更正処分等の原処分が違法であることを理由に、その原処分の是正を求める場合には原処分の取消の訴えを提起するのが一般的です。
 原処分の取消の訴えを提起するには、その前提として異議申立(再調査の請求)、審査請求などの手続を経ておく必要がありますが、これら租税不服申立手続での決定内容や裁決内容に不服がある場合であっても、これら決定や裁決の取消を求めるのではなく、あくまでも更正処分等の原処分の取消を求めることとなります。
 というのも、決定や裁決自体の取り消しは、決定手続や裁決手続に違法があった場合のみ認められるのですが、仮に決定や裁決自体が取り消されたとしても、原処分には効力を及ばさないため実効性がないからです。

2 請求の趣旨記載例
 そのため、請求の趣旨の記載例は、例えば以下のとおりとなります。
更正及び過少申告加算税賦課決定の取消訴訟の場合
(括弧内は国税不服審判所で一部取消があった場合)
 ○○税務署長が平成○○年○○月○○日付けでした原告の平成○○年分所得税についての更正のうち納付すべき税額○○円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定(ただし、いずれも審査裁決により一部取り消された後のもの)を取り消す。

更正すべき理由がない旨の通知処分の取消訴訟の場合
  ○○税務署長が平成○○年○○月○○日付けでした原告の平成○○年分所得税についての更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。

  3 申告額との関係
 原処分の取消訴訟においては申告額を超える税額についてなされた更正処分を争いますが、申告額を超えない部分の取消を取消訴訟で求めることは訴えの利益がないことからできないとするのが判例です。
 そのような場合、法定の期間内に予め更正の請求をすることができる以上、そのような手続をとることなく取消訴訟において申告額を超えない部分の取消を求めることは、法の定める手続を欠きながらこれを実現するものであり相当ではない、というのが理由です。


 4 処分理由の差替え
 取消訴訟の審理の過程において、原処分の理由とされていた課税要件事実が存在しないことが判明した場合、課税庁はその処分の適法性を維持するために別の課税要件事実を新たに提出することができるかどうか、という問題です。
 この点については、課税処分の同一性をどのように考えるのかということと絡んでおり、課税処分の同一性を、確定された税額(租税債務の内容)の同一性と捉えるのか(総額主義)、課税庁が主張している事実・法解釈の同一性と捉えるのか(争点主義)によって結論が異なってきます。
 
判例・実務は、総額主義をとっており(最高裁昭和36年12月1日判決、最高裁平成4年2月18日判決)、課税庁が課税処分時に認識した処分理由に誤りがあったとしても、課税処分によって確定された税額が処分時に客観的に存在した税額を上回らない限り、課税処分は適法とされ、処分理由の差替えが認められることとなります
 ただ、このような考え方には、手続的保障原則との関係で問題があるとして、原処分の理由とされた基本的課税要件事実の同一性が失われない範囲 という枠付けを行うべきとする考え方も有力です(金子宏・租税法・第16版・834頁)。
 
5 主張・立証責任
   課税処分の根拠規定の要件事実については被告課税庁に主張・立証責任が、権利障害規定や権利消滅規定については原告側に主張・立証責任があります。したがって、課税の根拠となる課税標準である所得の存在及び金額については被告課税庁に、過少申告加算税の課税除外事由である「正当な理由」については原告側に、それぞれ主張・立証責任があることとなります。
 なお、必要経費または損金についても、原則としてその不存在または一定額を超えて存在しないことの主張・立証責任は被告課税庁にありますが、被告課税庁が具体的証拠に基づいて一定額の必要経費の存在を明らかにし、これが収入との間に合理的対応関係を有すると認められる場合には、これを超える額の必要経費は存在しないものと事実上推定され、原告側は、かかる金額を超える経費の具体的内容を明らかにし、ある程度これを合理的に裏付ける程度の立証をしなければ、前記推定を覆すことはできないとする判例があります(東京地裁平成6年6月24日判決)。
 他方、更正の請求に対し、更正をすべき理由がない旨の通知処分がなされた場合の処分取消訴訟の場合、原告側に主張・立証責任があります。更正の請求の場合、一旦、納税者自身の申告によって確定した税額等を納税者に有利に変更することを求めるものだからです。

  6 攻撃防御方法の提出時期
 国税通則法では、国税に関する課税処分取消訴訟において、その訴えを提起した者が必要経費または損金の額の存在その他これに類する自己に有利な事実について課税処分の基礎とされた事実と異なる旨を主張しようとするときは、自己の責めに帰することができない理由による場合を除いて、国がその事実を主張した後、遅滞なくその異なる事実を具体的に主張し、併せてその事実を証明すべき証拠の申出をしなければならないと規定しており(国税通則法116条第1項)、これに違反した場合には時機に後れた攻撃防御方法として、裁判所が当該攻撃防御方法を却下することができるとされていますので(同法116条第2項)、注意が必要です。  



「税務訴訟」目次

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