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相続税に関する税務調査Q&A

 

 

1 どのような場合に税務調査が入るのですか?

 課税対象となる相続財産が2億円以上の場合には、税務調査が入る確率が高くなると一般的には言われていますが、そう一概には言えません。例えば、被相続人の生前の収入の割には残された相続財産が少ない場合、土地等の不動産ではなく、預貯金・株式等の金融財産の割合が多い場合、被相続人名義の預貯金の数・金額が少ない反面、相続人名義での預貯金の数・金額が多いような場合、相続人名義の預貯金に入出金先が不明な一定額以上の金員の出入りが頻繁になされているような場合には、相続財産の金額にかかわらず、税務調査が入る確率が高くなります。

 

2 どのような財産が税務調査の対象となるのですか?

 土地・建物などの不動産の場合、課税庁としても比較的把握しやすい財産であることから、評価方法の誤りや税法の適用を間違えているなどの理由で税務調査が入ることがありますが、問題は、より把握しにくい現金・預貯金です。実際、現金・預貯金は、近年の税務調査における申告漏れ財産の36.2%を占めており、割合的には一番多くなっています。次いで、その他(29.9%)を除き、有価証券、土地(いずれも16%)となっています(平成24年11月国税庁「平成23年事務年度における相続税の調査の状況について」参照)。

 

3 預貯金の通帳はどこまで遡って調べられるのですか?株の場合はどうですか?

 一般的に、被相続人の死亡時から遡って5年から10年と言われていますが、10年間は遡って調査されている場合がほとんどです。金融機関でデータが残っているような場合には、10年以上遡って調査されている場合もあります。株等の有価証券に関する取引データも同様です。

 

4 調査の対象は被相続人名義の預貯金の通帳だけですか?

 いいえ。被相続人の生前の収入の割には残された相続財産が少ない場合、被相続人名義の預貯金に入出金先が不明な一定額以上の金員の出入りが頻繁になされているような場合には、被相続人だけではなく、相続人すべてについて、その名義となっている預貯金も調査の対象となります。その場合、被相続人の死亡時から遡って10年間、同様に調査の対象となりえます。

 

5 相続税、贈与税はいつまで追徴課税されますか?

 平成23年末になされた税制改正により、平成23年12月2日以後に法定申告期限(相続開始から10か月)が到来するものについては、5年間、課税庁としては相続税の追徴課税を行えます(これを除斥期間といいます。なお、平成23年12月2日以前に法定申告期限が到来しているものについては3年間)。

 他方、贈与税については、従前どおり、申告書の提出期限から6年を経過する日まで課税庁は追徴課税を行えます。ただし、偽りその他不正の行為により、その全部または一部の税額を免れ、もしくはその全部または一部の税額の還付を受けた贈与税についての追徴課税(更正処分)は、申告書の提出期限から7年を経過する日までとなります。

 例えば、平成10年2月に被相続人が子に1000万円を贈与し、翌年の平成11年3月15日の申告期限に子が贈与税の申告をせず、その後も無申告の場合、課税庁は、平成17年3月16日まで贈与税の追徴課税を子に対して行うことが可能です。そして、偽りその他不正の行為により全部または一部の贈与税額を免れたような場合には、平成18年3月16日まで追徴課税されることとなります。

 

6 名義預金とは何ですか?名義預金かどうかはどのように判断するのですか?

 名義預金とは、実際には被相続人の相続財産であるにもかかわらず、名義上、相続人などの名義となっている預貯金をいいます。

ある預金が誰に帰属すべきかについては、形式的に名義だけで判断するのではなく、①当該預貯金の原資の出捐者、②誰が当該預貯金の管理・運用をしていたのか、③当該預貯金から生じる利息の帰属者は誰か、④被相続人と当該預貯金の名義人、もしくは管理・運用者との関係、⑤当該預貯金の名義人がその名義を有することになった経緯等を総合考慮して判断するというのが判例・実務での考え方です(東京地裁平成20年10月17日判決も同旨)。

例えば、被相続人の子名義の預金の場合、たとえ被相続人が預金の原資を出捐していたとしても、当時、子に対する贈与がなされた事実がある程度認められ、子自身が預金の管理・運用を行っており、利息も子が受け取って使用していたような場合には、名義預金ではなく、子の財産と判断される可能性は十分にあります。

これに対し、被相続人の配偶者、特に妻名義の預金の場合には、夫が自己の財産を妻名義で保有することも珍しくないことや、妻が夫の財産もまとめて管理・運用することはよくあることから、②誰が当該預貯金の管理・運用をしていたのか、③当該預貯金から生じる利息の帰属者は誰か、の基準はさほど重要視されません(上記東京地裁の判例も同旨)。

そのため、夫が死亡し、妻名義の預金がある場合、たとえ妻が管理・運用しており、利息等も妻が受け取って使用していたとしても、原資の出捐者が夫であり、妻が夫名義の財産もまとめて管理・運用しており、過去に妻への贈与の事実も認められないような場合には、名義預金と判断される可能性が高くなります。

 名義預金と判断されれば、被相続人の相続財産とされ、課税庁は追徴課税の対象と主張してきます。

 

7 名義預金の原資を特定できない場合には、どのように判断されるのですか?

 名義預金かどうかの判断にあたり、そもそも当該預貯金の原資を誰が出捐したかという事実は、とても重要な要素です。ところが、時間が経過するにつれ、証拠書類や当事者の記憶も曖昧となり、一体誰が出捐したのかよく分からないケースが非常に多く見受けられます。相続開始から遡って相当昔に預け入れられた預金などざらにあるからです。

 このように、夫婦や親族間における名義預金の原資を特定する確たる証拠がない場合には、夫婦や親族間の収入割合により形成されたと推測するという考え方が実務でのやり方であり、一般論としてそれを認めている国税不服審判所の裁決も存在します(平成13年3月29日裁決)。ただし、その場合であっても、その収入期間や収入状況、その他、支出に関する多寡などの生活状況一切の要素を考慮した上で、収入割合を考慮すべきです(上記裁決も同旨)。

 そのため、亡くなった夫と、相続人である妻との年収割合が数倍程度あったとしても、夫の収入期間が妻よりも短く、夫が生前ギャンブル等で浪費していた等の事情が存在する場合には、一概に夫婦間の収入割合で名義預金の原資が認定されることは誤りと言えます。

 

8 名義預金に時効はあるのですか

 名義預金とは、被相続人が単に相続人などの名義を借りているだけの状態であり、名義人に対して贈与がなされたものではありません。名義を借りているだけの状態である以上、何十年前になされた預金が名義預金であっても、被相続人の財産のままで、時効にかかることはありません。

 これに対し、真実、贈与がなされた現預金の場合には、質問5で説明したとおり、贈与税の除斥期間の問題となり、原則として申告書の提出期限から6年を経過すれば、贈与税の追徴課税がなされることはありません。

 なお、相続開始前3年以内の贈与については、贈与税の申告等の有無に関係なく、相続税の計算の際に、課税対象として持ち戻しの対象となります。そして、既に納税済みの贈与税があれば、最終的に計算された相続税から控除されて精算されることとなります。

 

9 相続税に関する重加算税で特に注意すべき事項は何でしょうか?

 架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為を行わない場合であっても、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告を行ったと認定されれば、重加算税の賦課要件が充たされます。

 たとえば、相続財産として投資信託が存在するにもかかわらず、相続税申告時まで申告業務を行う税理士にその存在をまったく知らせず、資料も渡さないような場合が考えられます。このような投資信託等の投機資産については、定期的に取引残高報告書が送付され、その存在を相続人も認識する機会が高いことから、単なる失念と言い逃れすることが困難で、場合によっては、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告を行ったと認定されることがありえますので注意が必要です(平成18年11月16日裁決参照)。

 

10 相続財産の実在の主張立証責任は誰にあるのですか?

 税務調査が入り、申告漏れ財産があるとの指摘が課税庁からなされた場合、修正申告に応じないとなると、最終的には更正処分がなされます。その場合、申告漏れ財産が相続開始時に存在することの主張・立証責任は国にあります。さきほどの名義預金についても同様、当該預金が真実、被相続人の財産であることの主張・立証責任は国にあります。

 この点に関し、相続開始の約3年前に存在した被相続人の現金につき、「収支計算を正確に行えば、相続開始時において残るはずのもの」であり、その後、相続までの間に「他の資産に変化したと考えるのが自然である」としか主張・立証せず、どのようなものとして実在していたかについて特定できない場合には、国の主張・立証としては不十分であると判断した判例があります(名古屋高裁平成15年12月25日判決)。

 以上、Q&Aに関する詳細、その他の税務調査に関する詳細については、当職が執筆した「税理士が実際に悩んだ相続問題の法務と税務」(清文社)にて解説しています。
 



「税務調査・修正申告・更正処分への対応」目次

税務調査が入ったら?    税務調査Q&A        
審査請求書の注意点     相続税に関する税務調査Q&A
 


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