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税務調査に関するQ&A(平成25年1月1日以降適用に係る最新版)

 当職は、税務調査や修正・更正対応などトラブルの前段階での相談に力を注いでおります。
  本項では、最新の税制改正を踏まえ、ご相談の多いご質問に関して記載しましたのでご参照ください。


1 税務調査は任意調査である以上、調査を受ける、受けないのも納税者の自由なのではないでしょうか?

 確かに、税務調査は、捜査官が納税者の意思に反して質問に回答させることや、帳簿等の検査を行うことができないという意味では任意調査といえます。
 しかし、調査官が「適法な」質問や検査を行っているにもかかわらず、質問に対して答えなかったり、虚偽の回答をしたり、検査の拒否・妨害を行った場合には、罰則(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)が科されるという意味で間接的な強制力を持っています。
 なお、平成23年末になされた税制改正に基づき、質問検査のみならず、帳簿書類等の提示もしくは提出権限も規定され(国税通則法74の3①)、平成25年1月1日以後に提出される物件について適用されます。
 さらに、調査について必要があるときは、調査官はこれら提出を受けた帳簿書類等を預かることができるとの規定が設けられました(国税通則法74の7)
 また、いわゆるマルサ(査察)との違いについては、9)を参照ください。

2 調査官の質問や検査が適法かどうかはどのように判断すればいいのでしょうか?  

 この点、判例では、「質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、右にいう質問検査の必要があり、かつこれと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまるかぎり、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられている」と判示しています(最高裁昭和48年7月10日決定。「荒川民商事件」)。
 つまり、①質問検査の必要性と納税者の私的利益が侵害される程度を比較考慮しつつ、納税者が被る不利益が社会通念上相当な範囲内であることを前提に、②調査官の合理的な裁量によって判断されることとしています。
 上記規範を前提にすれば、例えば、調査官が調査の必要性を納税者に説明した上で、調査目的に関連する業務資料の検査を求めることは適法と言えますが、調査官が何ら調査の必要性を説明することなく、私物が入っていると納税者が訴えているロッカーなどを調査官が検査することは違法といえるでしょう。

3 調査の目的、理由、必要性などを調査官に尋ねても明確に答えてもらえない場合にはどうすればいいのでしょうか?  

 上記判例(荒川民商事件)では、この点に関しても、「実施の日時場所の事前通知、調査の理由及び必要性の個別的、具体的告知のごときも、質問検査を行ううえの法律上一律の要件とされているものではない」とし、調査官において説明責任を果たさずとも違法ではない旨判断しています。
 しかし、「質問検査の必要性と納税者の私的利益が侵害される程度を比較考慮しつつ、納税者が被る不利益が社会通念上相当な範囲内」であることが適法な質問検査の大前提である以上(2)参照)、少なくとも調査の理由・必要性については調査官において具体的事情に応じた説明義務があるはずです。
 したがって、例えば、社会通念上、調査の対象とは考えられないような書類等であるにもかかわらず、調査官が何らその調査の理由や必要性を説明しないような場合には、繰り返し説明を求めてしかるべきで、それでも説明しないような場合であれば、当該書類の検査を拒むべきです。
 なお、平成23年末になされた税制改正により、平成25年1月1日以後、事前通知の際には、原則として、①実地調査の開始日時、②調査を行う場所、③調査の目的、④調査の対象となる税目、⑤調査の対象となる期間、⑥調査の対象となる帳簿書類その他の物件等を納税者に対し通知しなければならないこととなりました。

4 税務調査での質問検査権を拒んだ場合、どのような不利益がありますか?

 適法な質問検査を拒否したり、妨害したり、虚偽の回答を行ったような場合には、罰則規定(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)の適用のほか、反面調査が行われたり、推計課税がなされる可能性があります。
 反面調査とは、銀行、顧客、下請先など納税者と取引関係にある第三者に対して調査が行われることをいい、申告内容と帳簿書類に矛盾がある場合、帳簿書類の保存等に不備がある場合の他、納税者から十分な説明が行われないような場合になされます。
 また、推計課税とは、納税者が調査に協力的でない場合、必要な帳簿書類や資料がなかったり不十分である場合に、各種の間接的な資料に基づき所得を推計して課税処分がなされることをいいます。
 なお、青色申告に対する更正処分の場合には推計課税を行うことはできませんが、法定の帳簿書類の提示を正当な理由なく拒否することは青色申告の承認の取消事由に該当する結果、青色申告が取り消された上で、推計課税がなされる場合もありえますので要注意です。

5 税務調査にあたり事前の通知がなされなかったのですが違法ではないですか?  

 3)で紹介した荒川民商事件のとおり、判例上、事前通知を行わなくとも違法ではない旨判断されていますが、平成13年3月27日付事務運営指針「税務調査の際の事前通知について」では、事前通知は原則必要、事前通知することで調査妨害、帳簿等の破棄などが予想される場合などには例外的に事前通知は不要とされています。納税者本人に事前通知が必要でない場合、その関与税理士にも事前通知されることはありません。
 なお、平成23年末になされた税制改正に基づき、平成25年1月1日以後に実地調査を行うに当たっては、原則として、あらかじめ納税者に対して事前通知が必要であることが明文化されました(国税通則法74の9①)。もっとも、違法または不当な行為を容易にし、正確な課税標準等または税額等の把握を困難にするおそれ、その他調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると税務署長等が認める場合には、例外的に事前通知は不要とされています(国税通則法74の10)。その具体例については、平成24年9月12日付け法令解釈通達(国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達の制定について)4-9を参照ください。

6 納税者本人の同意なく、先に反面調査が行われるのは違法ではないでしょうか?  

 この点、納税者本人が調査に応じなかったことをもって反面調査が許容されるとする判例も存在するものの(大阪高裁平成2年6月28日判決)、その他の裁判例では、納税者本人の調査ないし同意を得ずに行われた反面調査を適法と判断しています(荒川民商事件、京都地裁昭和50年7月18日判決等)。

 

7 調査官の身分証の提示を求めたが拒否された場合、どうすればいいのですか?

 調査官が質問検査権を行使する場合、その身分を示す証明書(質問検査章)を携帯し、納税者の請求のあったときはこれを提示しなければならないと規定されています(所法236条、法法157条、消法62条5項、地法26条2項等)。最高裁昭和27年3月28日判決でも、「相手方が検査章の呈示を求めたのに対し収税官吏が之を携帯せず、又は携帯するも呈示しなかった場合には、相手方はその検査を拒む正当の理由があるものと認むべきである」と判示しています。
 したがって、そのような場合には、税務調査を拒否すべきであり、拒否しても罰則規定の適用はありません。
 なお、証明書(質問検査章)には、所属、官職名、氏名、生年月日、交付日、税務署長等名が記載され官印が押印され、当該職員が質問検査権を行使できる税目が明記されています。

8 違法な税務調査が行われた場合、それに基づく更正・決定処分も違法となりますか?  

 東京高裁平成3年6月6日判決では、「調査の手続が刑罰法規に触れ、公序良俗に反し、または社会通念上相当の限度を超えて濫用にわたる等重大な違法を帯び、何らの調査なしに更正処分をしたに等しいものと評価される場合に限り、当該処分の取消原因となる」旨判示しており、違法な税務調査が行われた場合に、それに基づく更正・決定処分までもが違法となるケースを非常に限定的に解しています。

9 税務調査といわゆるマルサ(査察)とはどう違うのですか?  

 いわゆるマルサ(査察)とは、国税犯則取締法に基づく犯則調査を意味します。いずれも国税局や税務署による調査ですが、以下のような違いがあります。
1 根拠条文
 税務調査の場合、法人税、所得税など各税法が、査察の場合には国税犯則取締法がそれぞれ根拠条文となります。
2 調査目的
 税務調査の場合、申告漏れ等の調査が目的ですが、査察の場合には脱税犯に関する検察庁への告発・通告処分を目的として行われます。
3 調査方法
 税務調査の場合、罰則による間接的な強制力はあるものの任意調査に分類されますが、査察の場合、裁判官の令状をもって臨検、捜索、差押を行うことができる強制調査です。逮捕権はありませんが、警察の応援を求めることはできます。
4 事前通知
 税務調査においては、判例上、事前通知がなくとも違法ではないとされており(Q5参照)、査察の場合、その性質上、事前通知はありません。
5 不利益供述
 税務調査の場合、それが適法な質問検査権の行使である限り、質問への回答を拒否すれば罰則規定の適用がありますが、査察の場合、間接国税に関するものでない限り、罰則規定はありません。査察の場合、実質的には刑事手続に準ずることから、憲法第38条第1項(自己に不利益な供述の強制の禁止)を意識してのことと思われます。
6 調査人数
 税務調査の場合には数人程度、査察の場合には数十人に及ぶ場合もあります。

10 質問検査の結果、脱税の嫌疑が生じた場合、事案がマルサ(査察)に引き継がれ、査察調査に移行することはありますか?  

 最高裁昭和51年7月9日判決では、質問検査権の行使により脱税の嫌疑が生じた場合には、事案を査察に引継ぎ、国税犯則取締法上の調査に移行すること自体は問題ない旨判示しています。 しかし、税務調査が最初から脱税犯の調査あるいは捜査のための手段として行われたような場合にまで、それによって収集された資料の証拠能力を刑事手続において認めることはできないものと考えます(最高裁平成16年1月20日決定参照)。


11 調査が終了した際にはどのような手続が行われるのですか?


 平成23年末になされた税制改正に基づき、税務署長等は、実地調査を行った結果、更正決定等をすべきと認められない場合には、その調査において質問検査等の相手方となった納税者に対し、その時点において更正決定等をすべきと認められない旨を書面により通知することとされました(国税通則法74の11)。
 他方、税務調査の結果、更正決定等をすべきと認める場合には、調査官は納税者に対して調査結果の内容(更正決定等をすべきと認めた金額及びその理由を含みます)を説明することとされました(国税通則法74の11②)。
 この説明を行う際には、修正申告または期限後申告を勧奨することができるとされています。
 ただし、この勧奨を行う場合には、納税者が修正申告書等を提出した場合には、不服申立をすることはできないものの、更正の請求をすることはできる旨を説明するとともに、その旨を記載した書面を交付しなければならないとされています(国税通則法74の11③)。
 なお、更正決定等をすべきと認められない旨を書面により通知した後、または納税者から修正申告書等の提出があった後であっても、新たに得られた情報に照らし非違があると認められる場合には、さらに質問検査等がなされることとなりますので注意が必要です(国税通則法74の11⑥)。


「税務調査・修正申告・更正処分への対応」目次

税務調査が入ったら?    税務調査Q&A        
審査請求書の注意点     相続税に関する税務調査Q&A
 


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